東京高等裁判所 昭和38年(う)456号 判決
被告人 川村八郎
〔抄 録〕
案ずるに、道路交通法第七二条第一項前段に規定する所謂救護義務と同項後段に規定する所謂報告義務とは別個独立の義務であつて、前者の義務を怠つた場合においても後者の義務を免れず、これを怠つた場合においては当然報告義務違反の罪が成立し、これと救護義務違反の罪とは併合罪の関係に立つものであること明瞭である(最高裁判所昭和三七年(あ)第五〇二号昭和三八年四月一七日大法廷判決参照)。然るに原判決は原判示第二(三)において被告人が本件業務上過失傷害事故を惹起した際右法条第一項前段による、被害者に対し救護等の措置を講ずべき義務に違反しその措置を講じなかつた事実を認定したが、本件公訴事実中被告人が右事故を起した際同法条第一項後段に規定する報告義務違反の点については、右報告義務違反の罪は前段の救護義務違反の罪が成立していない場合に限り成立するものであるとの解釈の下に、右公訴事実について無罪の言渡をなしたのは、道路交通法第七二条第一項の解釈適用を誤つたものと云うべく、右誤りが判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、論旨は理由があつて、原判決はこの点において破棄を免れない。
(鈴木良 福島 飯守)